JP Circularity in the Built Environment 2025
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オランダ、 ロッテルダム市の 「ブルーシテ ィ ・ プロジェ ク ト」
ニューヨーク ・ サーキュラー ・ シティ ・ イニシアチブBOX 3
BOX 4オランダ、ロッテルダム市の「ブルーシテ ィ ・プロ
ジ ェ ク ト」では、大型水泳プール施設をサーキュ
ラー・エコノ ミーに取り組む起業家たちの拠点へ
と再生。この改修事業では、既存の構造体や資材が再利用され、商業棟の 90% が再生資材で作ら
れている。さ らに、改修工程全体がサーキュ ラ リ
ティ原則に則っている26。
このイニシアチブは、 「廃材が一切埋め立て処分
されず 、環境汚染は最小限に抑え られ、製品や
原材料のスマー トな活用によ って何千、何万もの
安定した良質の雇用が創出される都市」の実現を
目指す29。試算による と 、110 億米 ドルの経済効果、1.1 万人以上の新規雇用が見込まれ、埋め立
て処分になる廃材をゼロにまで減らすこ とが可能
である。現在、建設と解体だけで、同市で発生す
る固形廃棄物総量の約 60%を占めている30。対照的な例が、北米の建築ス ト ッ クである。商業ビ
ルの平均築年数が約 30 年27である北米では、多く
の課題を抱え ている。例えば、郊外へのスプロール
化(市街地の無秩序な膨張)が進み、サーキュ ラ リ
テ ィ や改修事業を促進するインセンテ ィ ブ制度が不
十分であ り 、規制が緩い。また、単世帯住宅の割合
が高いため、地域一体での改修が困難である。特に米国では、使用済み廃材の最終処理にかかる費用負
担について 、全国的な枠組みが存在しない。リサイ
クル率は州ごとに異なり 、都市ごみの約 50% が埋め
立て処分されている28。 しかし、特定のインセンティ
ブ制度や逆物流の導入が進められつつあ り 、 「ニュー
ヨーク・サーキュラー・シティ・イニシアチブ」など
の取り組みの登場も、今後の期待につながる。
急速な都市化が進むアジア太平洋地域の開発途上
地域では、また別のシナ リオがある。2050 年まで
に世界の都市人口の半分以上がアジアに集中する
と見込まれている31。この地域における現在の建築
ス ト ッ クの大半は、北米やヨーロッパと比べて築年
数が浅い。そのため、多く の場合、改修工事よ り も
新築工事のほうが経済的である。ヨーロッパの国々
がリ ノベーシ ョ ンの波を迎えよ う と している一方で、
アジアで同様の大規模な取り組みが現れるまでに
は、まだ時間がかかるかも しれない。しかし、この
地域には今、サーキュ ラ リテ ィ の基盤を立ち上げる
チャンスがある。中国、日本、韓国、シンガポール
といった国々の経済先進都市ではすでに、廃材を
100%回収し、高いリサイ クル率を達成32。上海は、
建設セク ターの環境フッ ト プリ ン ト削減を目的と した
3 カ年計画を開始した33。
中東の建築ス ト ッ クは、伝統的な構造物と近代的な
構造物という異質なものの混在を特徴とする。こ こ
に、この地域の急速な都市化と経済成長が反映さ
れている。カタール、サウジアラビア、UAE といっ
た国々ではこれまでに、高層ビルや大規模商業施
設の開発ラ ッ シ ュを経験。これは、経済的繁栄と野
心的な都市計画の取り組みによ って加速したもので
ある。こ ういった近代的な構造物には、最先端の工
学技術や持続可能な設計原則が取り入れられてい
るこ とが多く 、改修との折り合いは建物によ って異
なる。例えば ドバイでは、2030 年までに 3 万棟の
ビル改修という目標を掲げている34。 中東全体でも、
廃材の埋め立て処理を減らす取り組みが継続的に
行われている。特に UAE では 2021 年にサーキュ
ラー・エコノミー・カウンシルが設立され、サステ
ナブルな取り組みを推進している。廃材分別の義務化を強化し、廃棄コス トへの意識
を高めるこ とによ って 、この地域におけるサーキュ
ラ リテ ィ の普及が一気に進む可能性がある。
多く のアフ リ カ諸国では、無認可の住宅や低層の建
築物が建築ス ト ッ クの大部分を占め、背景には、都
市部の年間人口成長率の急速な伸び(他の地域に
おける 0.3% に対し、 1.1%) という現実がある35。様 々
な国家プログラムや国際的な取り組みを通じ、建築
ス ト ッ クの質や持続可能性の改善を目指す努力が続
けられているが、この課題に特化した社会経済プロ
グラムやインフラへのさ らなる追加投資が必要だ。
ラテンア メ リ カの建築ス ト ッ クは、都市再生プロジ ェ
ク トや、建築ス トッ クの改修をはじめとするサステ
ナブルな建築アプローチを通じ、変革途上にある。
インセンテ ィ ブ制度が取り入れられたため、ステー
クホルダーは低品質な住宅の排除、二酸化炭素排
出量の削減、下水処理の改善に積極的に取り組ん
でいるが、改修事業全体の成熟度は依然と して比
較的低い。その要因には、 サプライチ ェーンの分断、
統一性のない規制などがある。
こ う した格差は、新たな可能性を明示している。ス
テークホルダーは地域の建築ス ト ッ クの質、都市部
の発展、規制環境、インフラなどを踏まえ、循環型
改装事業を効果的に展開する地域特化型戦略を検
討すべきである。 欧州は 1 つの規範となるであろ う。
しかし 、それ以外の地域で成功させるには、現在
の建築ス ト ッ ク 、都市発展のパターン、支援インフ
ラ といった要因をと り わけ考慮した、個々の状況に
即したアプローチが必要になる。
建造環境におけるサーキュラリティ : 改修事業の新たな可能性を切り拓く
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